正解は選択肢①が資生堂の損益計算書でした。
利益率とは|利益率の計算方法と業種別平均値
売上高営業利益率が低い原因は、「販売費及び一般管理費」がかかり過ぎていることしか、考えられません。
したがって、販売費及び一般管理費の中身を見直し、削減できる費用がないか十分に検討します。
販売促進費や広告宣伝費は、費用対効果を検証し、削減できないかを検討します。人員を増やし過ぎていないか、家賃がかかり過ぎていないかなど、早急に販売費及び一般管理費の見直しを行うことも、経営者として大変重要なことです。
(3)売上高経常利益率(業種別)と改善方法
業種 | 平成29年 | 平成28年 | 平成27年 |
---|---|---|---|
建設業 | 4.31% | 3.65% | 3.63% |
製造業 | 4.74% | 4.28% | 3.63% |
情報通信業 | 5.81% | 5.33% | 5.19% |
運輸業,郵便業 | 3.13% | 3.74% | 3.78% |
卸売業 | 2.16% | 1.99% | 1.90% |
小売業 | 2.30% | 2.20% | 1.84% |
不動産業,物品賃貸業 | 8.52% | 8.54% | 8.59% |
学術研究,専門・技術サービス業 | 7.損益計算書とは 84% | 8.18% | 6.02% |
宿泊業,飲食サービス業 | 2.63% | 2.65% | 2.77% |
生活関連サービス業,娯楽業 | 2.71% | 3.14% | 2.73% |
サービス業 (他に分類されないもの) | 4.38% | 3.86% | 4.01% |
売上高経常利益率は、営業利益に営業外損益をプラスマイナスした経常利益の割合で、営業活動以外の活動の結果も盛り込んでいます。
売上高経常利益率が低い場合には、無理な設備投資などによる、過大な借入金の金利負担(営業外費用)が影響を与えている可能性があります。
金利負担は特に重要で、なかには売上高の数十%もの利息を支払い続けている会社もあるほどです。
借入をすると、金利を支払うことで企業の儲けが減り、節税効果が期待できる場合もありますが、過剰な借入金は事業の存続に支障をきたすリスクがあります。借入金の額は、常に適正値を見ていくことが重要となります。
過度な借り入れを行っていないかを見る指標としては、流動比率、当座比率、自己資本比率などがあります。
売上高経常利益率が低い場合には、これらの指標も活用してみましょう。
利益率をレポートで確認
「クラウド会計ソフト freee会計」 は、レポート機能が充実しており、事業の状況をさまざまな視点からチェックすることができます。
たとえば、損益レポート では、利益水準が高い月は何月だったのかなどを確認することで、経営戦略に活用することができます。
![]() |
また、費用レポート では、仕入・経費の内容などを、グラフで確認することができるため、経費削減等の対策を講じることができるようになります。
![]() |
利益率について相談する
freee税理士検索 では2,900以上の事務所の中から、利益率について相談できる税理士を検索することができます。
また、コーディネーターによる「税理士紹介サービス」 もあるので併せてご利用ください。
税理士の報酬は事務所によって違いますので、「税理士の費用・報酬相場と顧問料まとめ」 で、税理士選びの金額の参考にしていただければと思います。
損益計算書
損益計算書(そんえきけいさんしょ)とは、一定期間における企業の収益と費用を記載して当期純利益を計算し、その会計期間における企業の経営成績を明らかにする財務諸表です。
つまり損益計算書は、企業に1年間でどのような収入(収益)や支出(費用)があったかを示し、そこからどれほどの利益または損失が出たかを明らかにします。
また損益計算書は英語でProfit 損益計算書とは and Loss statementと呼ばれることから、略してP/L(ピーエル)と呼ばれるのが一般的です。
損益計算書の収益・費用の区分
売上原価とは、その事業年度の売上高に対して商品や製品、あるいはサービスにかかった原価の合計の事を言います。 損益計算書とは
売上原価は売上高に対してかかった費用を指すため、事業年度内に作って売れ残った商品や製品の原価は含まれていません。
具体的には、販売した商品の仕入高、製品にかかった材料費や製造ラインの人員の賃金、製造機器や工場運営にかかった経費、サービスを行う人員の人件費などが売上原価として損益計算書に計上されます。
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費とは、事業を行う上での営業、販売関係の費用や事務、管理関係の費用のコミュニケーションの事を言います。
事業にかかる費用は、売上原価と販売費及び一般管理費に分けられますが、これは商品やサービスと直接関わっているかどうかにより分類されます。同じ人件費でも、工場などの直接製造に関わっている人への人件費は売上原価に入り、経理部などで働いてる間接的に製造に関わっている人の費用を販売費及び一般管理費に入ります。
具体的には、給与、広告費、営業費用、荷造運賃、旅費交通費、水道光熱費、保険料、減価償却費などが販売費及び一般管理費として損益計算書に計上されます。
営業外収益
営業外費用
特別利益とは、企業の経常的な経営活動とは直接関わりのない、特別な要因により発生した臨時的な利益の事を言います。
特別利益を設けるのは、臨時の利益を本業や副業によって得られる利益と一緒にしてしまうと、企業の収益力を見誤ってしまうため区別されています。
具体的には、不動産などの固定資産の売却利益、長期間保有した株式等の売却利益、役員保険金の受取などが特別利益として損益計算書に計上されます。
特別損失とは、企業の経常的な経営活動とは直接関わりのない、特別な要因により発生した臨時的な損失の事を言います。
特別損失を設けるのは、臨時の損失を本業や副業によって発生する損失と一緒にしてしまうと、企業の収益力を見誤ってしまうため区別されています。
具体的には、不動産などの固定資産の売却損 、長期間保有した株式等の売却損、役員退職金 、自然災害、火災などの損失などが特別損失として損益計算書に計上されます。
損益計算書の各利益の意味
売上総利益
売上総利益とは、製品の販売、サービスの提供などの本業によって得た利益の事を言います。
具体的には、売上総利益=売上高―売上原価という式により計算されます。
売上総利益が十分に稼げていないとさらにここから給料や営業の諸経費をを払うことになるので、会社として存続が危ないという事が分かります。
また別名粗利益とも呼ばれています。
営業利益とは、製品の販売やサービスの提供などにより得る事のできる利益を産み出すために必要となる費用を差し引いた利益の事を言います。
具体的には、営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費という式により計算されます。 損益計算書とは
営業利益は、売上総利益から本業を行うのに必要な費用を引いたものであるため、実際に本業で儲けである額と考えることができます。
経常利益とは、本業の営業活動以外で発生する利益や損失・費用を差し引いた後に残る利益の事を言います。
具体的には、経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 ― 営業外費用という式により計算されます。 損益計算書とは
経常利益は日常的に発生する営業活動と財務活動から生じる収益を表すため、企業の本来の実力を計る目安とされています。
税引前当期純利益
税引前当期純利益とは、投資業務など営利を目的とした企業活動以外で生じる特殊な利益や損失を差し引いた後に残る利益の事を言います。
具体的には、税引前当期純利益=経常利益+特別利益—特別損失という式により計算されます。
税引前当期純利益は、当期に起きた特別な収益を入れたものであるので、法人税等の税金を引く前の企業のその事業年度の収益を表しています。
当期純利益
当期純利益とは、その事業年度の利益である税引前当期純利益から税金を差し引いた後に残る最終的な利益の事を言います。
具体的には、当期純利益=税引前当期純利益—法人税等という式により計算されます。
当期の正常な経営成績を判定するための尺度としては,経常利益が重要でありますが、当期の企業活動の最終的な成果としての重要性を持っています。
【図解】0から学べる損益計算書の読み方
損益計算書はある特定期間の企業の経営成績を報告する活動報告書です。
損益計算書を見ると
・企業の売上の規模
・いくら利益がでたか?などの儲けの状況
・企業がどのようなものにコストをかけているか?といった経営戦略
の3つを知ることができます。
要するに、1年や半年といった一定期間に、「売上をいくらあげたか?」や「利益がいくら出たか?」を報告する企業の活動報告書です。
いきなりですが、ここで問題です。
化粧品で有名な資生堂と
ドラッグストアで有名なマツモトキヨシHDの損益計算書があります。
どちらが化粧品メーカーの資生堂でしょうか?
今の時点でこの問題が全くわからなくても安心してください。
この記事を読み終わるころには、この問題の正解するまでの思考フローと、損益計算書の基本的な読み方が身に付きます。
それでは次の章から、損益計算書の目的や読み方、入手方法などを紹介します。
損益計算書の概要
損益計算書をどのように読んでいくのか、まずは概要から紹介していきます。
損益計算書は企業の活動報告書です。
英語は「Profit & Loss Statement」と呼ばれることからPL(ぴーえる)と訳して呼ぶ人も少なくありません。
損益計算書を見ることで
・どの程度の売上、利益をだしたか
・どのような項目にコストを費やしているか
を確認することができます。
上の図を見ていただくとわかるように、非常に細かい項目で構成されているように思えます。
しかし、やっていることは単純で、
収益から費用を引いて、利益がでるのか?それとも損失がでるのか?を開示しているだけです。
それを表したのが下の図になります。
要するに、損益計算書は、収益と費用を比較して利益(または損失)を算出しているだけです。
ただ、上の右の図のように「収益−費用=利益」まで単純化してしまうと、内訳が分からず会社の成績が逆に分かりづらくなってしまいます。
ここからは元の図を元に一つずつ紹介していきます。
損益計算書に書かれている「利益の種類」
損益計算書は非常に単純で、収益と費用を比べ、どれだけ利益が出たかを表しているだけです。
1点注意が必要なのは、「利益」という用語が複数種類登場することです。
この章では、それぞれの利益の意味についてを一つずつ紹介していきます。
売上総利益とは
まずは、「売上総利益」です。
売上総利益とは、本業の利益です。
売上高から売上原価を差し引いて算出されます。粗利益とも呼ばれ、「粗利」という単語には耳馴染みがあるかもしれません。
売上総利益は、最も会社や業界の特徴が反映される利益です。
例えばリンゴをメインに販売している企業があるとします。
売上総利益の区分にはリンゴの販売を通して発生した売上高とリンゴの原価が表示されます。
株の売買をしていたとしても、株の売買は本業ではないので、この区分には含まれません。
※売上総利益率についてはこちらから
営業利益とは
続いて、「営業利益」です。
営業利益は売上総利益から販売費および一般管理費(以下、販管費)を差し引いて算出されます。
販管費は売上総利益を獲得するために、どれだけ企業が努力したのかを表示する項目です。
販管費には広告宣伝に使用した費用や従業員の給料が含まれるため、会社の経営方針が垣間見えます。
※営業利益率についてはこちらから
経常利益とは
次は「経常利益」です。
会社の実力が一番反映される利益です。
本業で獲得した利益に、本業以外で獲得した収益と費用を加算して算出されます。
毎期反復的に継続して行われる活動により獲得した利益のため、会社の実力が一番反映されるといわれています。
税引前当期純利益とは
次は「税引前当期純利益」です。
1期間に発生したすべての事象を加味して算出された利益です。
特別損益のような毎期のように発生しないような事象(例えば、事業の売却や火災損失)から発生した利益/損失も含まれます。
※当期純利益率についてはこちらから
当期純利益とは
損益計算書の利益のまとめ
これらの利益をまとめると、以下の図のようになります。
売上高から各種発生した費用を引いていき、最後に残るのが当期純利益というイメージです。
また各段階で、利益の特徴がわかります。
・業種や業態の特徴が反映され、企業の商品力の強さを表す利益(売上総利益)
・本業での利益(営業利益)
・企業の毎期経常的に発生する利益(経常利益)
・当期の全事象を反映した利益(税引前当期純利益)
・税金支払い後に純資産に返っていく利益(当期純利益)
最後に、損益計算書についてまとめると、以下の図のようになります。
損益計算書:会計クイズ事例
それではここまでの知識を使って、損益計算書の会計クイズを解いてみます。
もうすでに損益計算書を読むことが出来るはずです。
改めて冒頭で出題した問題を見てみましょう。
クイズは化粧品メーカーとドラッグストアの比較問題です。
損益計算書の会計クイズ:問題
どちらが化粧品メーカーである資生堂の損益計算書でしょう?
少し考えてみてください!
化粧品メーカーは商品を売るためにどのようなコストがかかるでしょうか?
よくテレビCMなどで見ることも多いと思います。
また、百貨店の1階には沢山の美容部員の方達が化粧品を販売していますね。
どのようなコストになって現れるでしょうか?
それでは正解発表です。
正解は選択肢①が資生堂の損益計算書でした。
損益計算書の会計クイズ:解説
化粧品メーカーの損益計算書の特徴
まず、化粧品メーカーは原価がかからなく有名です。
化粧品自体はあまり原価のかからない付加価値の高い商品です。
その原価の低い商品を、化粧品メーカーは様々な方法で販売します。
有名女優を起用し、CMで広告宣伝を出したり、百貨店に美容部員を派遣し営業をしたり。
その販売戦略が「販管費」という項目に現れます。
資生堂の損益計算書を見ると、売上原価は低く、その代わり販管費が非常に大きくなっています。
販管費の中身を見ると、一番大きな割合を占めるのは「給料・賞与」といった人件費。次に大きいのが広告宣伝などを表す「媒体費」です。
ドラッグストアの損益計算書の特徴
次にドラッグストアの損益計算書を見て行きます。
ドラッグストアは小売業のカテゴリーに入る業種なのですが、小売業の中でも特に競争環境の激しい業種です。
ドラッグストアは乱立し、客の取り合いが日に日に激化しています。
仕入れて販売する小売業は商品に差が付きにくく、差別化の難しい業種です。そのためより集客するためには値引きを行うことで価格面での訴求をする場合が少なくありません。
マツモトキヨシHDのコスト構造を見ると、原価が非常に大きいことがわかります。値下げなどで単価が低くなると、当然原価率は高くなります。その販売戦略が損益計算書に反映されています。
販管費の中身は店舗運営にかかる費用が中心になっているのは多くの小売業にも当てはまります。
以上、化粧品メーカーとドラッグストアの損益計算書の比較でした。
業種が違えば、戦略は当然違います。戦略の違いが損益計算書に反映されるという問題でした。
業種別の損益計算書の特徴
化粧品メーカーの損益計算書
資生堂以外の化粧品メーカーも、原価率が低く、販管費の割合が高いという特徴は同じです。
商品の販売方法が各社異なっており、化粧品メーカーを分析する際は販管費の分析が重要となります。
ドラッグストアの損益計算書
マツモトキヨシHD以外のドラッグストアもみてみましょう。
こちらも原価率が高いのが目立ちます。業界の競争が激しい場合は、特にどこも似たような損益計算書になることが多いです。
飲食業の損益計算書
飲食業の損益計算書を見てみます。
飲食業は原価の高い業種と思われがちですが、実は販管費が大きくなりやすい業種です。店舗運営にかかる人件費や水道光熱費、賃料などが多額に発生するためです。
よくメディア等で「飲食店の食材の原価は30%!」などと取り上げられたりして、値下げを要求されたりしていますが、仮に値下げをしてしまうと販管費を回収出来ずに赤字になってしまいます。
このように損益計算書を見ることで、売上高を構成するコストと利益の内訳を見ることができるので、損益計算書の読み方を理解すると正しい判断を行うことに繋がります。
100円均一の損益計算書
百円均一のキャンドゥとセリアの損益計算書です。
百円均一は単価が100円と上限が決まっているので、
・いかにコストを減らすか?
・いかに多く販売するか?
の両方が戦略上の論点となります。
100円均一の原価率は55~65%のレンジが通常で、このレンジの範囲で企業毎に戦略の差が出ます。
例えば百円均一運営会社の経営指標の一つである「雑貨比率」
セリアはこの雑貨比率がキャンドゥより高いことから、キャンドゥよりも原価が低いです。
通常、この比率が高くなると原価率は下がります。
百円均一で販売しているものは大きく2つで、雑貨と食料品です。
では雑貨比率が下がるとどうなるのでしょうか?
客寄せのための食料品が増え原価率が高くなります。
コンビニなどで150円などで売られているお菓子などが百円均一では100円で売られます。
このように集客の際に広告宣伝費が必ず使われるわけでは無く、通常より安い単価で販売するのも立派な集客方法です。
このような影響が損益計算書には反映されるので、ぜひ興味のある企業の損益計算書を見てみてください。
損益計算書の見方まとめ
最後に損益計算書のまとめです。
損益計算書は企業の経営成績を表します。
・どのようなコストがかかっているのか
・利益率はどれほどなのか?
などを知ることができます。
ここまでお付き合い頂きありがとうございます。
早速、自身の気になる企業の損益計算書を見に行って見ましょう!
損益計算書の調べ方はこちらより読むことができます。
IFRSと日本基準-財務諸表、損益計算書の違い Vol.3【事例で解説】
IFRSと日本基準の財務諸表における大きな相違点
(1)継続事業と非継続事業の区分表示
このように当期利益を2つに分けて表示する理由としては、「継続事業からの当期利益」に焦点を当てることで、将来、企業にどれだけのキャッシュ・フローが入ってくるかの予測に役立つことが挙げられます。非継続事業から生じる損益は将来にあまり影響を及ぼさないので、両者の損益区分がないと、将来予測の障害となる可能性があります。例えば、収益性が著しく低い売却予定の不採算事業があって、過去数年の当期利益が低く出ていたとしましょう。この場合、過去数年の当期利益水準の延長上で将来予測をすれば、この売却予定の不採算事業(=非継続事業)の損益によって、予測当期利益が下振れしてしまうでしょう。
(2)「経常的/臨時的」の区分がない
IFRSでは、「営業に関する損益」と「金融損益(営業以外に関する損益)」の区分のみ存在します。IFRSには、日本基準で「ケイツネ」と言われる「経常利益」(経常損失)の概念はなく、また、「特別損益」の表示も禁止しています。したがってIFRSにおいては、営業利益の次は、いきなり税引前利益になります。リストラ費用、固定資産の売却損益や火災・災害等の特別な事象による損益でも、特別損益を計上することは認められず、営業損益に含まれることになります。IFRSにおいて経常利益が存在しない理由は、特別損益が認められていないからだと考えることも可能です。
実は、経常利益は日本独特のものなのです。日本基準においては、臨時的に発生する巨額かつ特殊な損益(=特別損益)を含まない利益としての経常利益が、「通常な状態での収益力」を表す業績指標として重視されてきた背景があります。しかし、企業を経営する上で、様々な特別な事象が起きるのは当然であり、それらをコントロールするのも経営者の責任であり、特別損益までをも含めて収益力を測る、とするのがIFRS の考え方です。
損益計算書とその他の包括利益計算書の雛形
●事例:味の素の損益計算書を見てみましょう!
損益計算書を上から見ていきますと、「事業利益」 (注2) という項目が出てきますが、いったい何の利益かと疑問を抱く方もいることでしょう。これは、味の素が、独自の判断により追加したものです。下に出てくる営業利益とは区別する意図で、敢えて事業利益という名称が用いられています。このように、IFRSの特徴として、独自の判断により表示項目を追加することも可能です。 IFRSでは、日本基準のように段階損益 (注3) については具体的な定めはありませんが、企業の業績の理解を行う上で重要な場合には、追加的な表示科目、見出し、小計を表示することを要求しています。
損益計算書とは?5つの利益を知れば経営状況が見えてくる
決算時に作成する損益計算書とは?似た書類である貸借対照表との違いや、見る際のチェックポイントなどを解説します。
損益計算書とは、 その年度における会社の収益と費用を計算し、損益を算出する財務諸表であり、決算時に作成するもの です。
損益計算書を読み解くことにより、自社の経営状況を把握できるだけではなく、データを利用して財務上の分析や今後の経営方針の決定にも利用できます。
損益計算書とは
損益計算書は、 決算時に作成する決算書のひとつ です。
損益計算書を作る目的としては、会社が、その年度にどれくらいの利益を上げたのか、また今後さらに利益を伸ばすためにどの部分を改善すべきかを読み解くためです。
こちらでは、損益計算書の概要について説明します。
損益計算書が持つ意味について
・収益について
収益は、その年度における収益がいくらあるかを示す金額です。
・費用について
費用は、その年度の収益の中で経営にかかる諸費用を算出したものです。
・利益について
収益から費用を差し引いたものが利益です。
会社で得た利益を順番に把握することができる
段階ごとに収益と費用を計算することで、 どの段階で利益を出すことができたか、また赤字になっているかを知ることができる ようになっています。
なぜ順番に分けて利益を算出するのか
会社の経営活動におけるトータルの収益からまとめて費用を差し引いても、どの活動でどれくらいの利益や赤字が出たかを細かく見ることはできません。
売上げや営業活動、経常的な経営において、 会社の能力が健全であるか段階別に明らかにする必要 があります。
これにより、現時点で自社がどの部分に強いのか、弱い部分をどのように強化すべきかといった経営状況を知ることにつながります。
損益計算書と貸借対照表などとの違いは何か
決算書には、主に財務三表と呼ばれる3種類が存在し、その中で 特に重要視されるものが損益計算書と貸借対照表 です。
これらの2種類は、性質が異なるため違いをよく理解した上で、両方読み解けるようにしましょう。こちらでは、財務三表の性質の違いを解説します。
決算書として作成される財務三表について
貸借対照表は資産と負債の状況を知る書類
貸借対照表は、 その年度における会社の資産と負債全般を計算して作成する書類 です。
- 資産の部は、現預金や売掛金、固定資産のような会社の財産すべてをまとめます。
- 負債の部は、銀行からの融資を受けた際の負債や買掛金など、返済・支払いをすべき金額のすべてが記されます。
- 純資産の部では、起業の際に準備した資金や株主からの出資額などの資本金、利益の剰余分を計算します。
キャッシュフロー計算書は実際の現金の流れを示すもの
損益計算書と貸借対照表にはこんな違いがある
つまり、 損益計算書はその年度の経営活動で生じた損益、貸借対照表は損益計算書で算出された損益を含め、会社が所有する資産を表すもの という違いがあります。
損益計算書はどのように見れば良いか
損益計算書を正しく読み解くには、書類にどのよう項目が記されているかを知る必要があります。
損益計算書では、 5つの利益について経営活動にかかった収益と費用を含めて計算 されます。では、損益計算書についてどのように見れば良いかについて説明します。
損益計算書で算出される5つの利益とは
売上総利益は売上高から売上原価を差し引いたもの
・売上高とは
売上高は、商品やサービスの販売によって得た収益=本業における売上げそのものを指します。
損益計算書における売上高は、販売による収益の中で現金で回収できたものだけではなく、売掛金として現金化されずに計上されているものも含みます。
本業で得られた利益を算出したものが営業利益
上記で算出された売上総利益に対し、 商品やサービスに直接関係しない費用かつ営業活動に必要であった諸費用を差引いたものが、営業利益 です。
・商品やサービスに直結しない販売費や一般管理費を算入する
商品やサービスの販売を行う営業活動おいては、広告宣伝費や人件費のように販売にかかった費用=販売費や、会社の賃料・光熱費などの一般管理費が必要です。
営業利益は、売上高から売上原価と営業活動=本業にかかった販売費・一般管理費すべてを差引いて算出されたものであり、本業全般で得た経営成績であるといえます。
経常利益は本業以外で得た継続的な利益を指す
会社の経営においては、本業とは別の分野で損益が発生することもあります。この、 本業以外で生じた損益を算出したものが、経常利益 です。
税額を差引く前の利益が税引前当期利益
上記で算出した経常利益に加え、下記で説明する特別利益から特別損失を差引いた状態で、 各種税金への支出を算入しない金額が、税引前当期利益 です。
・本業とは別で一時的に得た利益が特別利益
経営活動の中で、例えば不動産の固定資産や株式を売却した際の利益のように、 継続するものではなく一時的に発生した収益が、特別利益 です。
特別利益が大きいと、税引前当期利益の金額も大きくなりますが、あくまで一時的なものであることを頭に置いておかなければなりません。
・特別損失とは本業以外で例外的に発生した損失
特別損失とは、固定資産や株式を売却した時に発生した 一時的損失に加え、災害や犯罪被害などのように例外的に生じた損失 です。
特別損失が大きかったとしても、通常の営業活動には関係せずその年度にのみ発生するものであるため、この金額は会社の将来的な経営能力とは切り離して考えるべきです。
最終的に当期利益としてトータルの利益を算出する
会社が支払うべき税金とは、法人税・法人住民税・法人事業税であり、これらは税引前当期利益=所得の金額に応じて算出されるものです。
ちなみに、固定資産税や消費税については、仕訳時点で別で計上されているため、税引前当期利益から差引く税金には含まれません。
こうして計算された当期利益は、次期への利益剰余金への算入、もしくは株主への配当に利用されます。
損益計算書はここを見れば経営状況がわかる
損益計算書に記載されている項目は、上記のとおりです。
これらの金額をもとにしてそれぞれ算出された金額について、経営状況を読み解くために見ておきたいポイントがあります。こちらでは、損益計算書の主なチェックポイントをあげていきます。
3つの利益率をチェックしよう
優良な経営を行っているかは「売上高総利益率」でわかる
商品やサービスの販売で得た 売上高に対して、売上原価を差引いた売上総利益がどれくらいを占めているかの割合 を、売上高総利益率と呼びます。
売上高のうち、売上総利益の割合(売上高総利益率)が高ければ、その分収益力が高く優良な経営を行っていると判断することができます。
本業における収益力を見るのは「売上高営業利益率」
売上高営業利益は、 営業活動=本業において得た営業利益が、売上高のうちどれくらいの割合を占めるかを表したもの です。
本業で発生した販売費・一般管理費を差引いて売上高営業利益率を計算すれば、本業全般を鑑みた収益力を見ることができます。
「売上高経常利益率」で財務における収益力を知る
会社の経常的な収益力を計るために使用するのが売上高経常利益率であり、 売上高に対する経常利益の割合 を示します。
自社の総合的な経営状況を知るには経常利益をチェック
前述したとおり、一時的な損益を除いて経常的な経営における損益を計算したものが、経常利益です。
経常利益は 会社の総合的な収益力の土台を知ることができる金額 であり、経営状況を計る重要なデータです。
仮に、営業利益が低かったとしても、資産運用などの財務活動に問題がなければ経常利益は高くなり、資金繰りにはあまり困りません。
損益計算書の金額とキャッシュフロー計算書の金額は異なる
・実現主義は商品・サービスを販売し収益が確定した時点で計上する
実現主義では、商品・サービスを販売して確実に収益を得られるとわかった時点で計上します。
入金額が確定するのが来期にまたがる場合、今期の収益に算入することはできません。
売上高と利益の関係性から経営課題をあぶり出す
この場合、 商品やサービスが顧客ニーズに合っているか否かをあぶり出すこと が必要です。
また、売上高は好調であるのに対して利益が思わしくない場合は、経営活動全般における課題はどこにあるか、損益計算書から読み解くことが求められます。
売上原価の実情を知るには「棚卸資産」を考慮に入れる
売上原価の実情を知るためには、 貸借対照表に計上される棚卸資産を合わせて考慮すべき です。
棚卸資産は、売れ残った在庫がどれくらいあるかを示す金額です。
そのため、棚卸資産の金額が膨れ上がっている場合、売上原価が下がっていても経営が順調であることの証明にはなりません。
コメント